コメディ / ****'04/小野 一縷
霧散する 何度も霧と消える 波飛沫の音を追って
波打ち際を 痩せたアエロが ひたひたと駆けてくる
人魚の亡骸に気付いて 黒い猟犬はおどおどと しかし 厳しく吠え
やがて その亡骸に喰らいつき 激しく貪る
残された黒髪の艶は その美しさを波間に掲げて
沖へ流れ 揺れ 色濃くなり 沈んでゆく
永遠に海流として流れる 物悲しい祈りの歌を聴いて
打ち震え 身投げした美しいセイレンの
溺死体を片付ける せむしの男が
粘っこい痰を 七色に輝く貝殻の上に吐く
浜辺 義姉さん達は皆 海を愛していた
海に包み抱かれて 死ぬんだ 死ぬんだ
回教徒達が 悔いを改める為
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