コメディ / ****'04/小野 一縷
 
飛ばす
腕や脚を失った 負傷兵達が 
赤黒く湿ったぼろ布に まみれて呻いている
「あの虫の群の中に お前の大切な人がいる」と 
アトロポスが囁く


爆撃機が遥かな高度からトロイアの大地へ 
ナパームの雨を降り注ぐ
烈走する炎の素早さに デュオニュソスの弟子は想い焦がれ
熱を上げて身悶える
神の系譜ですら燃やす 狂信という烈火


忘れてしまった詩句を 諦め切れないパンが
若くして死んだ詩人の墓を 探し出しては 暴いている
彼の暗い直感はいつも的中する
「どの詩もくだらない」


エーテルに酔ったまま 岸に打ち揚げられた人魚が
緑色に腐り始めている
霧散
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