寝息/小川 葉
 
 
 
いつもの帰り道を
いつものように歩いていると
知らない道を歩いている
どこかから寝息が聞こえるので
誰かの夢の中だとわかる
寝息を頼りに知らない道を歩いていくと
知らない家にたどり着いている
きっとわたしの家なのだろう
誰かの夢のなかでは
ただいまと言いながら扉を開ける
誰もいない
どこまでも続く台所
宙に浮かんだテーブルと椅子
窓際には愛するものの写真
知らない生き物だった
知らない言葉の寝言が聞こえる
すると冷蔵庫が開いて
ゼリー状のものがはみ出している
きっとおなかが空いたのだ
わたしもおなかが空いたので
冷蔵庫を覗こうとすると
寝返りを
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