選択記/小川 葉
 
 
 
洗濯機がうるさいので
蓋をあけると
見知らぬ人が泳いでいた
はげしい渦潮に飲まれぬよう
必死に波を越え泳いでいた
息継ぎをしながら
何か言っているけれど
よく聞こえない
耳をすますと
止めないでください、と
言っているようだった
わたしは蓋を閉め
テレビなどを見て待つことにした
もうしわけないけれど
そうすることでしか
たどり着けない場所が
きっとあるのだ
しばらく洗濯機は
がたがたうるさかったけれど
いつのまにか眠っていたようで
昼寝から目覚めていた
洗濯機の蓋を開けると
誰もいなくてほっとした
きっとたどり着くべき場所へ
たどり着くこ
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