選択記/小川 葉
くことができたのだ
自転車のブレーキの音がして
妻が帰ってくる
色物とは分けてと言ったはずなのに
いつものように叱られて
やれやれと庭に干す
その様子を息子が見ている
来年は小学生だ
ランドセルなども
買ってあげなければならないだろう
ふと気がつくと
わたしは泳いでいた
洗濯機の蓋を開け
見知らぬ人がわたしを見ている
はげしい渦潮に飲まれぬよう
息継ぎをしながら
止めないでください、と言った
そうすることでしか
たどり着けない場所へ
たどり着くために
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