ナルシス・ナルシス・/リンネ
れてしまう人ができるが、こうして生まれた陰影がこの瓶独特の世界観を作り出すようだった。瓶の内部では、様々な人物が交錯して現われ、一時一時に見え方が変わっていく。それはまるで万華鏡のような具合である。
しかし、どうも変な気持ちだった。Nはいつのまにか、瓶の住民の存在が妙に鼻についてきていたのである。異世界とでもいえるような場所で生活する彼らに対して、こちらから一方的な嫌悪感を抱くというのは、なんともおかしな話ではないか。そんな理不尽なNは、きっとどうしようもなく愚かな奴なのだろう。だが、そうやって自分の内面の醜さを確信しつつも、彼はやはりその瓶の観察を続けるのであった。
ガラスの表面に映り込
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