一人暮らし/小川 葉
一人暮らしするのだと言って
秋が家を出ていった
おかげで夏が終わると
すぐに雪が降るので困ったけれど
お盆とお正月だけは帰ってくれるので
夏は涼しく冬は少し暖かかった
一人暮らしはどうかと尋ねると
秋はひゅうひゅう木枯らしを吹かせるだけで
何も答えなかった
この家に帰ってくる気があるのだろうか
母はいつもそのことが気がかりだった
妹もとっくに嫁に出してしまったし
今年は父さんが死んだ
母だけが残されて一人暮らしをしていた
いつのまにかこの家の季節は
夏だけになってしまった
しかも残暑
いつまでもヒグラシが鳴いているのだった
秋は妻を娶っていた
幼い
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