一人暮らし/小川 葉
幼い子供もいた
けれども秋は木枯らしを吹かせるのに忙しくて
やがてみずからも秋になっていた
一人暮らしは淋しいことも知っていた
あのころ四人家族がいて
そこにはちゃんと四季があるのだった
秋は自分が一人暮らしをしたせいで
母が淋しく一人暮らしをしてるのだと思った
けれども秋は秋であることでしか
すでに生きることができなかった
早く家に帰りたい
そう思えば思うほど
秋は木枯らしを吹かせて
自分以外になることが
もはやできなくなっていた
そんな夜には夢をみた
春は父さん
夏は母さん
秋はぼくで
冬は妹
空には家族が残っていた
あの日四人で見たり見なかったりした
おなじ空があることに感謝した
生きている限り
やりなおすことができるはずだ
秋の空を見上げながら
私は思っていた
戻る 編 削 Point(2)