Queeen/salco
 
ので、国には濛昧の裡に自足する幸
福があまねく行き渡り、女王は神殿の美神として憧憬を集め、麗しい貴族
の子弟や歴戦の勇者を夜毎はべらせ、迸る熱情を身に享けては逞しい腕の
中で歌った。


 そんなわけで、飢饉が白熱の鋤を沃野に揮い数多の無産者を間引いて回
ったその年、北辺の沼沢地に棲む狢ヶ洞(むじながほら)の大頭(おおず)様という隠者の託宣通り、
女王は身籠った。
 月のものが止まり、侍医長が恭しく懐妊を奏上すると津々浦々へ触れが
出され、各地の祭殿には山なす供物が捧げられて暗黒神へのとりなしに毎
夜燃やされ、宮殿には太陽神の恩恵が色様々に印された異国の珍奇な果実
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