チワワみたいに小さくて/(罧原堤)
 
ったく話せなかった。本屋とかで、『カバーしますか?』と聞かれても、緊張して口が開かずにただ俯いたり、首を振ったり、そんなんだった。ブックオフに行って買いたい本があっても、『会員カードはお持ちでしょうか?』と訊ねられるのが苦痛で何時間もレジに行くのをためらったりしてた。でも今はそんなことは余裕だ。笑顔で対応できる。真夜中に気が狂って絶望して大声で喚きながら外に飛び出たりしてた。でも今は理性で抑えられる。でも、鬱屈した気分に襲われることは変わりない。そう、僕はもう狂えない。叫べない。ただ苦しみを苦しみとして受けとめているだけ。希望もなしに。ほらここはこんなにもうす汚れているんだ。
 僕はふらふらと街
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