川のコトバ/殿岡秀秋
 
もすくない
水溜りがあって
向こうから自転車に乗る小父さんがくる
水溜りがないところは狭い
このままでは正面衝突してしまう
ぼくは大声をあげて目をつむった

ぶつかるとおもったが通り抜けている
目をあけたら
無事に自転車を漕いでいる
叔父が荷台をもってくれて止まった
衝突しないですんだのが不思議だった
ぼくは溜め息をついた

「お子さん、運転うまいですねといわれたよ」
と叔父がいった
ぼくは叔父の子ではないので
そう思われたのがいやだった

荒川放水路の土手では
ひとりで自転車を漕ぐ時間が長くなる

叔父は荷台から手を離してしまうが
ぼくはまだ自転車を
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