川のコトバ/殿岡秀秋
」
叔父は何事もなかったようにいう
ついてくる靴音を聴こうとするが
目の前の道路をゆきかう人をよけることに気をとられる
しばらくするとまたペダルが軽くなる
叔父が荷台から手を離したなとおもうと
自転車がゆれだす
倒れそうになると
荷台を支えられたのが
ペダルが重くなるのでわかる
叔父はその間走ってついてくる
まっすぐ前をみて
背筋をのばして
ヤジロベエになり
サドルに座って短い足でペダルを漕ぐ
漕いでいないと立てた板のように
自転車は倒れてしまう
荒川放水路にかかる橋まできて
土手の上を川沿いに走る
舗装されていないが自動車はこないしひとどおりもす
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