ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
ろしければ、今晩、僕を泊めてくれませんか?」
農夫は俺の肩にポンと手を乗せると鷹揚に笑ってみせ、白い歯を見せ、
「それはこっちが言おうとしてたんだわ、先に言われちまっただかよ、さあ乗ってな」
俺たちは歩き始めた。農夫の家へと。蚊が飛んでいて、高い音で鳴いていたが農夫がぴしゃっと手を合わせ、叩き殺した。
「わしゃ殺生はしたくねえんべ、ほんとはげな、だけんども、いま歩きながらっぺよ、和歌ばつくっとたとばってんが、詩人やけんねわしゃ、そげなときゃいかんぜよ」
……こうもりが飛んでいた。あれがさっきの影だったのだろうか。だがそれにしては小さすぎる。
やがて大きな家が見え始めた。納屋があっ
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