ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
あって窓からもれる光が藁を照らしていて、喫茶店のような感じだった。農夫は戸を開けるなり第一声、
「帰ってきたでちゅー、今晩はお友達つれてきたでしゅよー、友達はねー、ウスバカゲロウっていう虫なんだよぉ」と、言った。そして急に眉間にしわを寄せ真面目腐った顔をすると、室内に入っていった。飛び出してきた子供が叫ぶ、
「へっへっへ、そうかい、ウスバカゲロウかい。へっへっへ、はかなげな虫さ。じゃあホモの洋二には気をつけとかなきゃいけねーやな、あいつは昆虫採集が趣味だからよー」
 そいつは顔を、洋二呼ばわりされた娘に向ける。そこにはリンゴのように赤い頬っぺをした女の子がいて、恥ずかしそうにしながら、

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