ジュリエットには甘いもの 前編/(罧原堤)
か? お前さえ良ければな。mu、hyuhyuhyuhyu。お前を世界一の大作家にしてやろう、だがお前が死んだ後には地獄に連れてくぞ」
ドストエフスキーの脳が軽くなった。鬱積していた気分が晴れやかになり、希望が灯った。今の今まで彼を苦しめていた深い憂愁がもはや消え去っていた。
悪魔はドストエフスキーの顔が晴れやかになったのを見て取ると、勝ち誇ったかのように笑顔を見せた。
「どうするのだ? ホメロスやゲーテなどもはや忘れ去られてしまうぞ。お前こそ人類史上最高の作家になるのだ。未来永劫お前以上の作家は出てこないのだぞ。この地上に名声を残せばそれで満足であろう。もはや何を望むのだ? 躊躇うことな
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