道を走る、走り続ける/ブライアン
 
。彼女は主人公たちをどうして男性にしようとしたのか。しかも体育会系の。

 でも、ふと思い出す。これをくれたのは誰だっただろう。高校3年間、ダートコースみたいなグラウンドで、毎日、土埃にまみれながら一緒に過ごした、彼からだったんじゃないだろうか。

 小説は嘘でしかない。けれど、作者の語る嘘は、誰かの体験にぶつかり、現実に蘇る。彼は、走ったことを思い出す。元々ゴールにたどり着けない駅伝を。付き添いのいない一人だけのウォーミングアップを。勝つことを期待されないレースを。

 小説はとても残酷だ。夢は夢。それでもだ、なにも知らずに描き出した夢物語は、高校1年生の春、期待に胸を躍らせたあの時
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