よこしまなにじ/結城 希
モと同じ顔をした人が大量になだれ込んで来て、
僕は仰天してしまった。
「クモは人気者だからな。出ずっぱりなんだ」
と教えてくれたのは、アメという人だった。
その後何人かのクモが部屋を出ていって、
僕は最初にニジの名前を教えてくれたクモがどれであったか
もうわからなくなってしまった。
テレビから歓声が上がった。
見ると、さっきまでタバコを吸っていた男が、
立ち上がってテレビに観入っている。
どうやら舞台は、
いよいよクライマックスを迎えようとしているらしい。
僕は興奮を抑えられずに、
入って来たばかりのドアを開けて、部屋を出た。
舞台までの廊下は上り坂
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)