よこしまなにじ/結城 希
り坂になっていて、
歩いていると、だんだん空に近づいている気がした。
舞台袖に着く。
そっと、脇から客席をのぞく。
ちょうど暗転の後で、人々は少しざわついていた。
スポットライトが光った。
ニジが一人、舞台に立っていた。
ニジは音もなく現れて、そして長く輝いた。
一瞬の静けさの後に、拍手が鳴った。
瞬く間に、会場は喝采で包まれた。
ニジがにやりと笑っていた。
「な、嫌な奴だろう」
気づくと、傍らに最初に会ったクモがいた。
僕はそうだねと頷きながら、
ニジに拍手を送っていた。
その日はよく晴れた日曜日だった。
(即興ゴルコンダより)
戻る 編 削 Point(0)