よこしまなにじ/結城 希
 
す」

僕が答えると、彼は一つ口笛を鳴らした。

「そいつは愉快な名前だ」

彼はにやりと笑った。
なんだか嫌な感じの笑い方だった。
「おっと、キツネのお嫁さんが来たってことは、そろそろ俺の出番かな。
 じゃあ、また後でな」
彼は言うが早いか、気づいたら部屋を出て行っていた。
僕は物も言えずに、目を白黒させていた。

近くにいた人に、「さっきの男の人は何て言うの?」と訊ねると、

「ああ、あいつはニジって言うんだよ」
と、教えてくれた。その人の名前はクモと言った。
「ニジは、嫌な奴さ」とクモは付け加えた。

どうして、と僕が訊ねようとしたとき、
部屋にクモと
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