夜明けるクラクション/水川史生
遠)
一瞬間を喰い殺す傲慢、突如として足掻く自我の崩落、組み替えられる螺旋の上で噛みあわない歯車がねじを壊す。わたしはまだわたしのまま。足音が遠ざかる。遠景が霞む。手元から話さないままでいる布が何もかもを塞ぐ。世界は見えない。飽いて、もう二度と帰らない水圧を待っている、無意味、暴かれる。錯綜する。
硝子は既に粉々で左手からは血が溢れていてそう、余白をきっとこれで埋めよう。深夜をリズムの波長が打つ。眩んでいる。眩んでいる。鈍く光る銀色が朝を呼び込む前に、脈が全身を撫ぜる前に、キスから始まる抑圧の拒絶、ページを裂いた本のタイトル、足首までを埋めた白の、その上で踊る文字の羅列。雑然とした水槽に沈殿
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