夜明けるクラクション/水川史生
 
ちてゆく刃物の温度。針が貫いている時間をとめて。スリーステップの嘆き、何度だってやむことのない掬って救って救って救って救って救って救ってあたしを愛して愛して愛して殺してよ、ねぇ、心臓は左側に、心は中心に。焼けたままで海へと飛び込む。八本足の蜘蛛がゆうるり天井へ上昇する意図は途切れたままだ。
鮮やかさをなくして終わりが見えていない。世界はこんなにも色褪せている。去られている目の前を突き通してあの時塗りこみ続けた嘘みたいに息を止めるその時まで吐き通して。
遠くで光るものは何でもないただのネオンなのだから。(愛を作り上げてうそぶいて何人もが記憶を削っている/そこには何もない/残ることのない永遠)
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