都市風景(21〜40)/草野春心
 
それもまた一つの広告となり
  西友の主婦たちの群れと
  「安いよ」の声に消されてしまう

  31.

  いつの日にか
  褪せた干草のうえで
  暑苦しく抱き合えたらいい
  梁のあちこちに潜む
  蜘蛛たちに見られながら

  32.

  消しておいたテレビが不意に語りだすのは
  白と黒の喃語

  33.

  居酒屋の便所で
  獏が吐いていた

  34.

  蝋燭に神様は埋まって
  誕生日ケーキの上に立っていた
  誰にも気づかれず

  35.

  七月は
  兵隊の汗の臭い
  十月は
  死にゆく西
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