対峙/豊島ケイトウ
 
いなるべく烈しい音楽を聴きたい
 私も逃げてしまいたかった見張り役などやめて!

 幾星霜、見守り見守られ愛し愛され憎み憎まれうらやみうらやまれ逸脱し逸脱され再び取りつき取りつかれ盗み盗まれ見限ったふりをし見限ったふりをされ悲しみ悲しまれ舌を出し舌を出されウインクしウインクされ肩をすくめ肩をすくめられ地団駄を踏み地団駄を踏まれ実体の伴わない歌をうたい実体の伴わない歌をうたわれ腕まくりをしながら頭をかかえ腕まくりをしながら頭をかかえられ山めとつぶやき人間めとつぶやき返されとうとう音をあげたのは私だった

 無限に近い雲のたゆたいも
 もはや定型に等しく
 ほんのりと上気した月こそ
 
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