対峙/豊島ケイトウ
 

 何の価値もないゲテモノだ

 発狂した巨人のような雷鳴を恐れたのはいつだったか

 私は山と対峙しているが
 私は山を見るのを忘れた私は山を愛でているが
 私は山を欲するのにうんざりしている

 (老いさらばえた魂なんかくれてやる
  そのかわり足枷を取っ払いあくびとともに伸びをして
  自分さえ予期しないほどの快哉を叫べ
  村全体を襲った記憶を思い起こしながら

  激情――そうだろ、そうだと言ってくれ!)

戻る   Point(13)