無知のカバンに雨は降る。/ブライアン
。きっと、戦争など起きないに決まっている、と。けれど、その間中、戦争は起きていた。起きている事実を真摯に受け止めたのは、実際にそう伝えた先生だけだった。先生は無知ではなかったから。
遠い国の物語。ミサイルや爆弾が飛び交う景色などこの世にありはしない、とそう思っていた。先生に反して子供は無知だ。この世にありもしないとおもう景色の只中に置かれたとしたら、躊躇いなく人を殺すだろう。思い描いていたものは、想像通り儚いものなのだ。幻影は現実に入り込み、侵食していく。
自転車のかごに乗せられたカバンを手で押さえ、さらに南へ走る。どこからだろう、積乱雲の気配が漂い始める。一瞬であたりは暗くなる。雷が
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