無知のカバンに雨は降る。/ブライアン
 
、誰も知りはしないこと。カバンの中身を知るものはいなかった。そういう時が、人生には必ずあるものだ。ただ、世界が滅亡に向かっているその時に、起きてしまったということだけ。ただ必死に自転車を走らせ、南へ向かった。可能な限り南へ。

 ポケットの中にはポータブルのラジオが入っていて、雑音を交えながら音楽が流れていた。当時流行っていた音楽ではなかった。どこかの国の音楽だった。異国のその音楽は、世界を滅亡へ導こうとする国の音楽だった。ロックンロール、フォーク。歌で世界を救おう、と言っているのだろうか。
 小学校の頃、戦争の歴史を習った。生徒の誰もが思う。誰も望まないのになぜ戦争は起きるのだろう、と。き
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