無知のカバンに雨は降る。/ブライアン
あり、色とりどりのトタン屋根が緑の田の中に浮き上がっていた。自転車を走らせる。風が体に当たる。友人の家へ向かっていたのだろうか。高校へ行こうと思っていたのだろうか。その日のことなどは、もうほとんど覚えていない。景色だけが脳裏に残っており、知らなかった悲劇の中、自転車を走らせていたのだった。
南へ。その方角だけは確かだ。太陽の光が目の前にあり、遮断するものは何もなかった。影がなかった。日光を直接体に受け、熱を吸い込むようにして、自転車を走らせていた。自転車の中のカバン。いつもならジャージが入っているはずのカバン。その日はジャージなど入っていなかった。誰にも知られてはいけないこと。そして、誰
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