月と骨/水川史生
 

色の飛んだフィルムで ゆるやかに呼吸を写し取っては泣いたのだ

皹割れたのがあの空であったように
裂かれた余波は戻らないのだから
濡れた あなたよ
首に当てた花びらの有毒性
終える時にきらめく 華やぐ 祈ればこそ
背を撫でては雫をこぼす あなたたれば
もう先へと走らずにいる
翔けているあれは 死に急ぐのだ
遠ざかるのだろうけれど 景色 体温 ありふれる水彩
瞼を曇らせなさい、あなた
臆さずに逸る寂漠の 押さえられた紙片が雪のように舞って
囁かれる夜の果てが
偲ばれるあの冬があったのだ

誘引される一手から 酸性 ガソリンの匂い

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