【句評】 桃破壊する少女/ふるる/古月
でそれを認識できない。これが上手く機能する。春の風がざあっと草原をゆらし、緑の絨毯がさざなみ立つようなイメージが自然に浮かぶ。
また、この句の面白さは、その動きにあるだろう。どこからかやってきた風が草原を通過し、草食動物を乗せて、そのまま遥かな天空の彼方へと放物線を描くのが見える。このスピード感が気持ちいい。
春の野、草食動物という牧歌的で彩りを感じる情景から一転、青空を突き抜けて、真っ暗な宇宙を通過し、灰色の荒涼とした月面へ。この色彩的なコントラストは素敵だ。
月面という単語の持つロマンもさることながら、一瞬に吹きぬけた風の後、今しがたまで草を食べていたはずなのに気がつけば月面にいた草食動
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