軌跡/ロリータ℃。
すれ、認めてはくれなかった。
理由は簡単なのに、私は長い間気づかなかった。彼には愛する女がいることに。
全て気付いたのはその女が妊娠し、彼が執筆を止め私の前から姿を消したその日だった。
私が28歳になった秋、彼は戻ってきた。私はそのとき、彼のあとを継ぐように作家になっていた。
彼は無職のくせにギャンブル、女遊びを繰り返し離婚され、実家とも縁を切られたと泣きながら話した。
その惨めな姿に、激しい怒りを覚えたのはなぜだったのか今になってもわからない。納得のいく理由はいくつも思いつくけれど、どれも違うと感じてる。
私は思いきり彼を蹴飛ばした。怒りが増えると知ってても。
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