おんな/ベルヤ
場から逃れられないのさ
トイレ行きてえからってしょっぱなから言い続けても
足の上の物体は知らぬ存ぜぬあげくの果ては握手と称して握りやがる
その両手を放してくれないか
僕は、互いに立ち上がって向き合ったその女に
すっかり酔いが醒めて来てしまったよと笑ってみた
足は痛いほどしびれていたけど
楽しくない飲み会ほど損した気分はないから
次の店へ行ったんだ
飲んでも酔わなくなるのはいつものことで
美味しかったはずの酒も最後は味気なく色褪せてた
儚い女は内面に美学を充実させろ
たくさん語り合いたい仲間が集まっていたんだ
両手で胸に花束だきしめてエスカレーターで振り返ってくれた無口
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)