悲しき熱帯/天野茂典
 
  悲しき熱帯  



  エフリマコ
  電線がうつくしいゆうぐれ
  バス停には女子大生の列が
  ミシンとコウモリ傘のようにできている
  みんなちがってみんないい*顔をして
  いちにちの終わりを共有している
  エフリマコ
  ぼくもバスで帰ってきたのだ
  高揚した精神と
  疲れきったみなとをもって
  やがてはだれでも帰ってゆくのだ
  『海辺の墓地』*へ
  エフリマコ
  熱帯の雨林
  風と雨量は地球の財産
  宇宙空間にはまったくないものなのだ
  みそはぎの紫のように
  たそ・かれ てゆく
  顔
  顔
  顔
  
[次のページ]
戻る   Point(3)