薄く、淡く、確かに。/灯兎
 
のかな」
 彼女は花弁をひとつ拾い上げて、それをてのひらで弄んでから、頷いた。

 自慢ではないけれど、僕は嘘つきだ。僕の嘘には彼女があげたような嘘ももちろんあるし、誰かとの関係を致命的に損なってしまうような嘘もある。それでも僕は嘘をつき続けてきた。きっとそうする以外にうまく他人との距離を測れなかったのだと思う。だから僕がそんなことを聞かれるのは、しごくまっとうなことであるようだ。
 「そうだね……たぶん誰かや何かを守りたいって思ったときの嘘が多いんだと思う。そこにはもちろん自分や見栄も含まれるから、僕らはそれを慎重に扱う必要がある」
 こんな言葉が今更になって意味をなしてくれるとも思わ
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