薄く、淡く、確かに。/灯兎
思わない。でも僕にはそうするほかにないのだ。
「そんな嘘っていうのは、多くの場合において臆病な心から生まれるんじゃないだろうか。嘘で守るものを傷つけたくないわけだから。それは優しいとも言えるし、見方によっては傲慢であるのかもしれない。けれど、どこかに後ろめたさは残ると思うよ」
「後ろめたさっていうのは、つまり自責による免罪符みたいなものかしら」
「そうであるとも言える。僕らは許し、許されて初めて生きていけるんだしね」
これも、嘘だ。少なくとも僕は彼女に対して、許してほしいなどと思ってはいない。
むしろもっと苛烈に責めてほしいと、彼女の気が済むまで怒ってほしいと思っている。な
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