感情による共感、によらない一体感についての個人的な考察/テシノ
 
なる。
つまりその時、「者」と「物」とは混ざり合い、不可分の同一体になるのだ、というのである。

私はあの時の父の言葉を、例えばサッカー選手がゴールを決める瞬間などといった、何かを極めた者にしかわからない特別な感覚なのだろうと思っていた。
しかしこの本によれば、父の言わんとした事とは微妙なニュアンスの差こそあれ、それは日常レベルで誰しもが経験している感覚だという事になる。
前置きが随分と長くなってしまったが、そんな諸々からふと思った事がある。
それは、対象物と私達との境界が消滅する瞬間が確かにあるとすれば、私達は様々な芸術作品に対して、感情による共感以外の方法で一体感を得る事ができるの
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