感情による共感、によらない一体感についての個人的な考察/テシノ
面白いだろうな、と。
それから十数年後の事となるのだが、私はとある本の中に、あの時の父の言葉を彷彿とさせる文章を見つけた。
生憎と本のタイトルを失念してしまったのだが、それは「行為するものと行為されるものの境界が消える瞬間」という内容のものだった。
例えば、氷。
氷は冷たい。しかし氷が単体で存在する限りにおいて、それは決して冷たくはない。それに触れ、「冷たい」と感じる者がいて初めて氷は冷たくなりうる。
「冷たい」のは氷である。しかし「冷たさ」は触れた者の肌に存在する。この瞬間、「氷に触れた者」と「氷」とは、「行為する者」と「行為される物」の境界線を飛び越えた同じ事象、「冷たい」になる
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