感情による共感、によらない一体感についての個人的な考察/テシノ
いの父親だった。すぐ脇で唸りながら弓を引いている子供はたちまち置いてけぼりである。
的に刺さった矢を抜きに行くその背中に一発かましてやろうか?などと小さな頭が回転し始めた頃、ようやく殺気に気付いたのだろう。父は私にアドバイスをくれた。
的を狙うだけでは駄目だ。自分が矢になって的まで飛んでいけ。
それは、幼い私が理解するには難しすぎるアドバイスだった。結局その日、私は地面にいくつもの穴を空ける作業に終始した。
小難しい言葉で子供を煙に巻いた感のある彼の背中に穴が空かなかったのは忍耐によるものだったが、しかしそのアドバイスは妙に私の心に残った。そんな事ができるわけない、でもできたら面白
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