船/鈴木陽
 
で表現する。同じ方向が幾度となく執拗に繰り返され、我々は呪文のように反復されるフレーズをいやが応にも暗記させられた。その形は我々の行為の、その細部のみを機械的にさせており、動作の一つ一つに組み込まれるそれはすべて船の体現となった。我々の行為の中で潜在的にエコーしている。船員の行為は船から生まれているので、船は血の通った母であるとさえ言えるかもしれない。また我々はその子供であるとして理解される。もっと環境に即して言葉を変化させるならば、それは土地的な強度によって、結ばれているのだ。だから規則的に上昇する土地である梯子の元で波の音を聞くのは、船で寝起きする船員にとって安らかなものとなる。波にゆられ、海
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