船/鈴木陽
 
かの違いしか存在しない。我々もいずれは幽霊となって、この船を動かす十字に磔にされるだろう。船は終わりのない変形の過程で新しい船室を作りだし、我々を深い忘却の底へいざなっている。

その柱は骨であり、その部屋は臓物であり、その糸が神経の系統を司っている。一個の身体としての船の上には血液も流れていて、それは数種の塩が金属が電気的な結合を保ちながら流れるものである。ガスと水道は同じ方向を向いているから、その二重写しとなった直線は相互に連絡を持ち、それは梯子である。梯子は映進して繰り返される数十の十字から構成され、そして船のいたるところ、あらゆる階層にも潜伏して存在し、その垂直性を帆とは異なる次元で表
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