春の悲劇/藪木二郎
春の畑に全裸死体だ
まだピチピチの白い肌だ
曲者は乙女から恥じらいも奪って
大きく開いた腋からも
股からも
西洋タンポポが萌え出ている
乳房に透けた静脈は凍りつき
乳首は意外
くすんだベージュ
けれど予定調和のピンクよりも
小蠅たちには魅惑的だ
口腔の深淵からは
早くも腐り始めた消化管の吐息
鼻腔からも
もうちょっと微妙なフレグランス
第二の小蠅がその深淵に遊んで
堕ちそうになってブンと飛び立ち
今度は無難に
左の小穴に潜り込む
探偵はまだか
不在の探偵はチャップリン気取り
奇術の発表会に嬉々とし
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