春の悲劇/
藪木二郎
として向かっている
いつかパノラマ写真で観た
パリの風景の幻像の中を
犠牲者はこのまま朽ち果ててしまうのか
腐敗ガスで腹が膨らみ
その頂上に臍が飛び出し
むくんだ頬に
両の眼は福笑い
腋と股から
タンポポの種子が飛び立つ
と
いうのはやはりやり過ぎ
遠く微かにパトカーのサイレンの音
下品なジョークのベテラン刑事
何かのマニアの鑑識課員
まだ若い美貌の巡査も
規制線を張りながら
タンポポの辺りをチラチラチラ
ああ
どっちにしたって
悲劇悲劇
戻る
編
削
Point
(1)