3席2夜(春雷)/まきび
 
一匹のかえるが這ってきた。生き物の中でも、かえるは嫌い。私を食い荒らす害虫や、彫り物をする人間達より嫌いよ。かえるが何をしたわけでもないし、なぜかはわからないけれど。私はかえるを無視した。かえるは一人でに話し出した。
「さくらどん。雨がくるで。春になるで。」
かえるはのろのろベシャリベシャリと、這ってゆく。
「この、のろま。はやく帰れ。葉が重くなるのだから雨が降ることくらいすぐに分かるわ。憎たらしい。」
かえるは腹が立つという感情すらないような視線で、辺りを見渡した。

 やがて雨粒が体に当たりだしたかと思えば、すぐに激しく降りだした。ガサガサの木肌に逆らうように、体中に雫ができる。も
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