シコシコ/攝津正
 
に居ると、いつもと変らぬ自分が居た。母親は無邪気に、今日のライブはどうだったか、ベースの立花さんは一緒にやろうと言わなかったか等と訊いてくる。それが攝津の音楽家としての誇りを再び傷付ける。だが攝津は、何事も無かったように淡々と答えるだけだった。ライブに行って死にたくなったなどと親に語っても理解されぬのは必定だからである。
 母親が作ってくれたオムライスを食べた。そして一階の店に降り、この日記を書いた。今の気分は灰色である。澱んでいる。決して爽やかではないが、激烈に死に向っている訳でもない。ただぼんやりと欝である。

 月曜日攝津は早退した。親に自殺したいと言うと、死ぬ人間がどうしてCDをそん
[次のページ]
戻る   Point(0)