シコシコ/攝津正
 
拒否反応を示す。拒絶。厭だという感じ。反射的な否定。
 攝津は、自殺するか音楽家になるかの二者択一だ、と思った。だが厳しい二者択一だ。どうすれば音楽家になれるのか、攝津には見当も付かなかった。石田幹雄や松本茜を見たが、自分が彼・彼女らのように指が動く日が来るとは到底思えなかった。自分は駄目だ、駄目人間だ、と攝津は思った。ブログにコメントしてきた人が言うように、凡庸だ…。凡庸さに堪えられぬから死ぬしかないのであり、それをどうにかしなければならぬ。
 この苦痛と困難に満ちた生を継続するのが良いことなのかどうか、攝津には判断が付かなかった。攝津は借金漬けだった。借金を返済する為に働いていたが、それも
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