生きる/攝津正
最初に就職した会社で、社長のCさんから、攝津君はビジネスに関心無いだろ、と図星な指摘をされた。商談の席で、攝津が凄く詰まらなそうな顔をしていたのだと言うのである。そういえばそういう事もあったかもしれぬ。攝津は商人、ビジネスマンにはなれぬ性質だった。というか、何者にもなれぬのだ。
そういう事を考え始めると、抑鬱が深く深く進行し、遂には動けなくなってしまう。不安や抑鬱、パニックには理由がある。この社会に適応出来ないという事、これこそ攝津の根本問題だった。資本主義が共産主義に変ろうと無政府主義に変ろうと人間性という物が変らぬ限り攝津はその社会に不適応であろう。攝津が、母子密着である故に怪物であるとい
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