生きる/攝津正
 
ダは理解出来なかった。攝津は全く哲学的ではなかったのかもしれぬ。哲学的でない者が哲学科に進み、あまつさえ哲学研究者を目指してしまった悲劇の結末が、現在の非正規労働、肉体労働、単純作業という現実なのかもしれぬ。だが、現実は現実として受け容れねばならぬ、と攝津は考えた。

 攝津はレインボーリングに再び参加した。
 橋爪亮督グループ / As We Breatheを聴く。静謐な音楽である。
 攝津は一旦絶望したが、再び地域通貨に取り組んでみようと思っていた。先ず地域通貨芸人になる事を目指す。地域通貨でチップを貰う事を目指す。前田さんのように現金でカンパをくれる人は珍しいし、それを期待してはいけ
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