生きる/攝津正
世渡りが下手なのだった。生き下手。
早稲田大学では授業に真面目に出、サークル活動を謳歌し、充実していた。大学一年生の頃、Cの家庭教師をしながらサルトルの『存在と無』を読み、難しいのに辟易したのを覚えている。しかしサルトルで難しいというなら、他の哲学者はなお難しかろう。Cを密かに同伴して哲学の授業に出た事もあった。佐藤眞理人先生の授業だった。攝津は大学院が懐かしくなって佐藤先生にメールしてみたが、応答は無かった。
だが大学院は逃避だったのだろう。企業に就職したくないから研究者を目指すなどというのは甘い考えだったろう。ドゥルーズを読んで食っていこうなんて甘過ぎる。今ならそう思える。だが、当時は
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