生きる/攝津正
な信念が、虚構作品を書くのを不可能にしているのを悟った。「事実」「真実」しか書かぬ、書けぬ。これでは小説家失格だが、対策は既に練ってある。「攝津正」性に依拠しない方途を模索中である。
三島由紀夫の『鏡子の家』を昨日読了し、『禁色』に移ったが、三島は戦前を描いてもいいが戦後の子だという感じ、時代の子という印象が強い。『鏡子の家』は力作だし紛れも無い傑作だ。いつか自分もこういうのが書けるようになればいいが、「自分」しか主題が無いのでは駄目だなと独り苦笑する。
生きる事、生きて働く事は大変だ。大変だがやり遂げねばならぬ。死ぬ迄は生きねばならぬ。当たり前だが。然し当たり前の事が難しい。
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