生きる/攝津正
と攝津は思った。懸命に「生きる」事さえ出来れば。自分の精一杯を尽くす事さえ出来れば。
ところで攝津は、買い物依存症を除いて、両親の望む通りの息子を演じようとし、その無理に疲れ切っている=憑かれ切っているのであった。若い頃は「カミングアウト」などもしたのだが、最近は親に性の話もしない。親も敢えて訊いてこない。親は攝津が結婚して子供を作ると思っている。笑うべき事だが。だが、攝津は「同性愛者」でも無い自分を感じている。同性愛者にすら、なり損ねたと感じている。攝津は新宿に、二丁目に全く適応出来なかった。後にはトラウマと恐怖症だけが残った。インターネットの出会い系は幸福な出会いを一切保証しなかった。街で
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