生きる/攝津正
 
。自己反省が苦しみを倍加させた。その事は精神科の医師からも指摘された事である。

 攝津はまどろみ、虎になる夢を見た。研究所で飼われている小さな虎で、餌を食べると絞め殺されてしまう。不思議な夢だった。

 攝津は風邪を引き掛けていたが、風邪薬を飲んで眠ったら良くなった。攝津は自分が小説らしい小説を書けぬのは幸福だから、幸福過ぎるからではないかと自省した。自分には帰るべき家もあれば、愛する家族もいる。何一つ不自由無い。小市民である。労働がきついと言っても、我儘でしか無い。同僚や環境に恵まれ、他の人よりも楽をしている、と自分で思う。パートタイマーとはいえ、正社員的ハードな働き方は自分には無理だ
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